オープンの日ときたまさんの個展会場へ行ってきた。
渋谷から吉祥寺へ向かう井の頭線はよく利用していた路線だが、個展会場のある池ノ上の駅に降り立つのははじめてだった。

小さな駅で改札を抜け階段を降りると、途端に方向が分からなくなってしまった。昔はそう言う事も無かったが、最近はiPhoneに頼り切ってしまうため自分の向かう方向を見失う事がたまたまある。単に年のせいかも知れないが、そこは棚に上げておく。

駅から一分という近い場所にははじめに勘違いしてしまうと、とんでもなく遠くなる。とは言え小さな駅周辺なので逆方向に回っても5分とは違わないが時は夕暮れ、昼間とは見える物が違ってくる。いつもの通り「あ、良いか。今日はたまたまね」と自分に言い聞かせながらとぼとぼと暗い夜道を地図を片手に歩くこと5分。なんと、線路沿いの小道を入ったホームから見えるくらいの場所にあるギャラリーにたどり着く。

小道には一昔前だった時には焼き鳥屋など小さな飲み屋街だっただろう風情を残したままギャラリーがある。ギャラリーよりは焼き鳥で一杯やりたくなったが、漏れてくる光を頼りに扉をあける。扉の向こうには真っ白い壁に、キラキラ輝く色彩が乱舞していた。そこは、別世界。なにか分からないが、自分の表情が柔らかくなり笑みがこぼれていく。

ときたまさんは奥のカウンターにある椅子に背を向けて座っている。
恵比須の時たま食堂では何度かお目にかかっていて、昨年度のiPhoneケース展にも参加して下さっている彼女の人となりは、常に「その時」を楽しんでいる様に感じられるが、背中には常に寂しさがある。きっと、自分のスイッチを持っている方で人と接する時にはそのスイッチが自動的に入るのだろう。

作品はそのスイッチが完全にONの状態で作られていて、私のはじめのひと言は「楽しいですね」だった。これは「たまたま」ではない。絵を描くことは楽しいと言うキーワードで、しばしお話しをさせて頂き次の用事へと向かう私の手のひらには彼女の人生の楽しみ方のひとつが、彩度の高いシミとなり残されていた。

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